例えば恋をしなくなっていた件 ― 序 reboot 1

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 ワイドショーとか新聞とか、ポータルサイトのニュース欄でも構わない。深刻さを装いながら、その実、だからどうするかなんてまるで頭に無い、ごくごく下世話で、ほんの何日かは世間を騒がすことはあるかもしれない、しかし、今じゃそんなことは珍しくもなんとも無く、例えニュースで伝えられても、数十分後には人々の興味から外れてしまう、そんな殺人事件を一件、未然に防いだ、かもしれない件について。

 SNSで知り合った地元の青年。メッセージのやり取りをしているうちに、彼の書く愚痴に、いや、愚痴ではなくても文面の端々から何やら彼の尋常ならざる混乱を感じた。しかしまぁ、それは他人事、コレが若い女の子ならば会ってみようかと積極的にもなるのだが、こっちにそういう気もそれ程無かったにもかかわらず、なぜか突発ミニoff。


 要するに、だ、世間一般ではそんな珍しくもなんとも無い、しかし、本人には大問題、大失恋をしてしまったのだと。しかし、如何にありふれたことかは、あれほど彼が思いいれたっぷりに身の上に起きたことを語ってくれたことは覚えているにもかかわらず、"彼のドラマ"自体についてはイマイチ記憶が曖昧で、まぁ、それ程に僕にとっては珍しいことでもなんでもなかったのだが、

 さて、問題は、彼が相手の女の子と刺し違えてでも、みたいな事を言い出したこと。

 最初はファミレスで話していた僕らだったが、そんな話をしだした頃には、僕のクルマで、その辺をウダウダ流していた。


 車の外はシンと冷えた、冬の深夜の空気。あ゛~、最近の若いもんはすぐに斬っただの貼っただの・・・、ヲジサンは明日から厄介な現場が始まるし、早く帰って寝たいんだがなぁ、などと考えてみたりもする。

 彼のこの感情、身に覚えが無いわけではない、という言い方が、如何に控えめな表現であることか。

 無論、相手を殺してしまいたいなどとは考えたことは無い。誰かを想いながら、その行方をうしなったときの混乱、から、まだ、その言葉が日本に紹介される前にストーカーなるものをやったこともある。

 オレはどうやって、そういうような感情を折り合いをつけてきたっけ?


 それにしても、何か、時々、悩める青年の話し相手、というのを定期的にやっちゃっているような気がする。思えば、同様に、若いときに僕がある方に、どうにも未整理な気持ちを聞いていただいた経験があるからなのかもしれない、とも思う。

 京都にいた当時、関西ローカルの深夜番組で越前屋俵太氏と一緒に「モーレツ科学教室」などに出演されていた、平智之氏に、直接的にはKBS京都ラジオの番組宛に、どうにも未整理なきもちをダラダラ書き綴って出したはがきを見ていただいて、あまつさえ、連絡を頂き、銀閣寺道の24時間営業の喫茶店で、真夜中、取り留めの無い話を聞いて頂いたという経験があるというのが、少なからず、作用している。当時は平氏も若かったのだろう、しかし若いからといって多忙ではあったはずで、身も知らずの一リスナーのたわ言、あんな要領も得ない話を聞いていただけるなんて、奇跡に近い。

 あの時平氏は「決してドロップアウトしちゃいけないよ」と、僕に言ってくださったが、いっていただいた甲斐なく、僕はしっかりドロップアウトしてしまった。

 が、あの時、話を聞いて頂いたという事実自体に、僕は救われたという事実がある。同じ事を、僕よりも若い人に対してできるだろうか? できるといってしまっては、それは傲慢だ。が、ドロップアウトし、自分なりにのた打ち回った経験を、何とか生かせないものだろうか? そんな思いは、はっきりと自覚している。まぁ、こんな風に断片的に書いてみたところで、読んでいる人には伝わりようも無い。必要に応じて、詳細に筋道を立てて書いていくしかない。


 喉元をとっくの大昔に通り過ぎていった痛みではある。 しかし、そんな自分が忘れてしまった痛みだからといって、見過ごすなんていうことが、他ならぬ僕がやることとして、それは正しいことであるとはとても思えない。だから、この青年と会うことにしたんじゃないか?

bgm; undercover of the night/The Rolling Stones

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